Blue Radical について
Blue Radical 機器ですが、一旦納品されたもののBlue Laser光の出力が安定せず、再納品でも同様の症状が見られ、当院においては残念ながら一旦導入をPending(キャンセル)としました。世界初の歯周病治療器ということで、その効果は認められています。一方、非常に高価でセンシティブな機器であり、セッティングに時間がかかることと、また保険診療との比較において通常の患者さんにルーティーンに使用しづらいこともあります。今後も、Blue Radicalの動向はウオッチしていきますが、本機器は魔法の機器ではなく、開発者の菅野先生も話しているとおり「患者さんのセルフプラークコントロールが重要」「いきなり施術するものではなく、歯周精密検査を経て、適応症(残存ポケット6mm以上の重度歯周炎)に行う治療であること」「歯石除去力は通常の超音波スケーラーに対して弱く、主としてRadical反応による活性酸素の殺菌力を期待するものであること」などから、先ずは、通常の「歯周基本治療」を行うことが重要です。歯周基本治療を行うことで、「患者さんのモチベーション」や「患者さんの治療への生体反応・免疫力・治癒力」を知ることになり、その後の、歯周外科治療での予後も予測しやすくなります。Blue Radicalの原理・着想は素晴らしく、私も大学で基礎及び臨床研究はもとより、歯周病の領域だけでも、ペリオクリン、エムドゲイン、リグロスの治験を担当しておりましたので、「治験を経て正式に歯周病治療器として認可」され、日本の「ものつくりの英知を集めた機器」へのリスペクトはあります。ただ発展途上の機器でもあり、チップやファイバーの耐久性や製品精度、機器の安定性も今後益々改善されていくべきと思われます。モリタ社のアーウィンアドベールは「歯周炎及びインプラント周囲炎の非外科及び外科的治療」について、臨床研究を主導し複数の論文を発表、結果として治療機器としての「インプラント周囲炎治療への適応拡大」に貢献した経験もあります。歯周病専門医・指導医である立場から、私としては「歯周基本治療・歯周非外科治療」の重要性・効果をエビデンス・臨床経験をもとに十分理解しております。更に、歯周組織再生治療に代表される「歯周外科治療」「インプラント」も専門としており、学生達や一般歯科医師にレクチャーする立場です。これからも、「患者さんファースト」で、保険治療をベースとしながら、個々の患者さん、そして個々の歯周炎罹患歯にオーダーメイドでベストな治療計画を立案し、必要に応じてエルビウムYAGレーザー等を使用して、Blue Radicalに勝るとも劣らない良好な結果を出せるものと自負しております。当院の、歯科衛生士達も同意見でした。すでに、Blue Radicalについて、お電話で相談を受けたいと希望された患者さんがいらしたようですが、以上のことから、当面は、Blue Radical無しで、エビデンスに基づいた「ゴールドスタンダード」な歯周治療をブラッシュアップして進めて参ります。Blue Radicalに関しては、中には発売元でも関知していない過大な広告を謳っている歯科医院も散見されるようです。良い機器も使い方次第です。EBM(Evidence based medicine)がEBM(Economy biased medicine)になってしまっては、開発者の先生も悲しむと思います。我々は、真に患者さんのためとは何かを考え引き続き精進していく所存です。今後とも、「歯周病専門医 くぼた歯科クリニック」を宜しくお願いいたします。 院長 久保田 健彦
